日本・シンガポール外交樹立50周年を記念し、日本で初めてプラナカン・ファッションが紹介される展覧会(本展は、福岡市美術館に続いて2館め)。
食や住まいと同様、衣服もまたその土地の文化や歴史、精神性を映し出す。中華、マレー、そして西洋という複数の文化を吸収しながら形成されたプラナカン(中国系やインド系など移民の子孫)の象徴として、サロンクバヤはまばゆい輝きを放っている。
サロンクバヤ。
まず、その魅惑的な響きに心惹かれる。
精彩な染めや手描きの巻きスカート(サロン)と、これまた目を見張るようなレースを施したブラウス(クバヤ)から成る衣装。その特徴は、18世紀から20世紀前半、シンガポールおよび周辺地域の激動に呼応するように変化してきたということだ。
つまりサロンクバヤは特定の民族の伝統的な衣装ということではなく、時代や環境に寄せて新しいものを取り入れ、広がりながら進化してきたハイブリッドなスタイルなのである。
とにかく、その優美さに見惚れる。贅を尽くした華やかさ、これ見よがしの艶やかさ、とは一線を画す、穏やかで可憐なエレガンス。それでいて芯の強さがある。もちろん、美しくつくりこまれたものに対して目のない高貴な女性たちの愉しみとしての一面も。
2016年7月26日(火)~2016年9月25日(日)
松濤美術館