2017年5月23日火曜日

REI


地球上のどこかで、同時に呼吸をしているというのに、まみえることの恐らく叶わない、だけど無意識のうちに憧れてやまない、ある女性の言葉とドローイングに、無謀にもシンクロを試みている。ほとばしる赤。腑抜けた自分に気合を入れるため。


もっと強くなりたい。挑んでも、挑んでも、敗北感にさいなまれる。40年間服をつくりつづけながら、一度も心から満足したことがない。満足するのが怖い。満足してはならない。満たされたら、そこできっと創造が尽きてしまうから。

だから自分の前に壁を建てる。より高く、より厚く、より無情な、とても乗り越えられそうにないような壁。これを越えるため、怒りや不安、恐怖、痛みをエネルギーに変える。そして乗り越えたら、乗り越えてしまったなら、また新しい壁を建てる。限界や境界の先にしか、誰も見たことのない新しいものは存在しないから。



すべて私の勝手な解釈と妄想。
虚空のなかに見いだすのは、頼りない自分の顔。
本当のことを知りたければ、コム・デ・ギャルソンを着てみるしかない――

(ニューヨークで開催中の展覧会について、彼女は当初、服を来場者に触れさせようと提案していた[図録より]。が、美術館側の“セキュリティ上の理由”で退けられた。実際にさわれるかどうかはともかく、タンジブルを実装できないファッション展やデザイン展の限界はそこにある。店に行けば好きなだけさわれるからだ)

――すると、完璧な戦闘服のようだと思い込んでいたそれは案外、このみっともない人体を抱きしめるための、強さと繊細さをあわせもつ繭のようなものなのかもしれない。