2015年12月2日水曜日

廣江友和展 / ローラン・グラッソ展

技法に関する話題をふたつ。手短に。


Hellish Toy Story -地獄草紙より-
廣江友和 / Tomokazu Hiroe
2015. 11.20(金) - 12.5(土)
MEGUMI OGITA GALLERY 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1

"uneasy hellfire" 2012-2013, 260.6 x 324cm, oil on canvas mounted on board

4枚組の大作「uneasy hellfire」(2012-2013)は、12世紀の絵巻物「地獄草紙」の東京国立博物館本(安住院本)のうち「雲火霧地獄」の火炎に着想を得ているとわかる。しかしその技法は、ルーベンスの第2フランドル技法(17世紀)による地塗り(キャンバスと非吸収性地)と下塗り(油絵具)を施した上に、火炎およびそのなかで倒れるぬいぐるみを油彩で精細に描き、仕上げにはニスの代わりにビニールをかけてコーティングするという複雑なプロセスを経る。西洋の古典技法や現代の工業製品をレイヤードすることで、主題である日本絵画の平面性を追求するという意欲的な取り組みとなっている。





「Soleil Noir」 ローラン・グラッソ展
2015. 11.11(水) - 2016.1.31(日)
銀座メゾンエルメス

Studies into the Past(過去についてのスタディ) カンヴァスに油彩、金箔 各2060 x 1300 x 320mm
フランス人のローラン・グラッソは、歴史資料やリサーチを通じて主に超常現象や言い伝えなどを抽出して独自の世界観を作り上げるアーティスト。史実に基づくというよりは、むしろ史実をねつ造するという魅惑的な活動を行っている。今回は日本各地の伝承などを調査し、日本の屏風・襖絵といった絵画鑑賞の形態にもインスピレーションを受けながら、さながら架空の考古学者のコレクションを眺めるような神秘的な空間を作り上げた。

多様なメディアを用いて構成されているが、その中には15世紀のフランドル技法を採用した絵画もある。日本の或る地域の遺構にまつわる言い伝えの場面を描いたものだが、技法も遠近法も西洋絵画のそれであり、「2つの異なる時間が衝突」するような奇妙な感覚にとらわれる。