2017年4月14日金曜日

納得しようとするのをやめる


高尚なことは何ひとつわからない。これが音楽なのかどうかも。
ただ、こんこんと湧きでて空間を満たす豊かな音のなかに静かに座っていると、不思議な没入感があって、瞑想でもしているような心持ちになる。ベンチに腰掛け頭を垂れて、耳を傾ける人々の姿は、どこか祈りにも似ている。

私も心ゆくまでここに腰掛けていたい、その後の予定などどうなってもいいから。意味、意義、意図の解釈なんてどうだっていいんだ、この場に同化しさえすれば。もし、それが音楽ということなのならば。



アピチャッポン、ZAKKUBALAN、高谷史郎による3つのインスタレーションは断片的に重なり、やり取りが感じられる。会場全体が「async(非同期処理)」の館だ。



美術展における聴覚の喚起には計り知れない可能性がある。まわりにいる人々の存在はいつしか掻き消えて、私自身が音と光の波のなかに溶けていく恍惚感。それを味わうために、とにかく会場に足を運んだ方がいい。

坂本龍一|設置音楽展
2017年4月4日(火)−5月28日(日)