松屋銀座で、小泉誠さんの仕事を拝見。
[第734回デザインギャラリー1953企画展]
プロダクトの絶滅危惧種
2017年4月16日(日)−5月15日(月)
松屋銀座7階デザインギャラリー1953
「絶滅危惧種」にはドキリとするけれど、「琺瑯」という、読めなくはないこの、「いかるが」っぽいというか、どこか高貴な薫りのする字面がまずもってよいではないか。
紀元前1400年のギリシャにはすでに金属にガラス質の釉薬をかけるこの技術があり、エジプト・ツタンカーメン王の黄金マスクも琺瑯でできているという。主に装飾技術として日本にわたってきたのは飛鳥時代とのことだが、はっきりそれとわかるものが残っているのは正倉院の「十二陵鏡」(8世紀)。桂離宮の建具の引き手などにも使われているそうだ。
紀元前1400年のギリシャにはすでに金属にガラス質の釉薬をかけるこの技術があり、エジプト・ツタンカーメン王の黄金マスクも琺瑯でできているという。主に装飾技術として日本にわたってきたのは飛鳥時代とのことだが、はっきりそれとわかるものが残っているのは正倉院の「十二陵鏡」(8世紀)。桂離宮の建具の引き手などにも使われているそうだ。
一方、実用品としての琺瑯は、日本では1866年にはじめて琺瑯の鍋がつくられた。その後、陸海軍の食器としても採用され、昭和初期までに市民の生活に広く浸透していった。しかし戦後の高度経済成長、プラスチック、アルミ、ステンレス製品の台頭により、手間のかかる琺瑯の製造者は激減。今や、国内ではメーカー4社のみであるという。
ちなみに我が家ではずっと野田琺瑯の月兎印のポットを使っている。軽くて、気軽で、手に馴染む。とにかく軽いからキャンプにも持っていく。IHも直火もいける。乱暴に扱うので釉薬が欠けてしまった部分がところどころあるが、まだまだいける。まだまだ愛せる。
そうしたら、小泉誠さんが琺瑯のキッチン道具をデザインしているという。国産琺瑯がなくならないために、また琺瑯の魅力を伝えるために。墨田区の金属加工と三重県・桑名の琺瑯加工を組み合わせた「kaico」シリーズ。ケトル、コーヒーポット、片手鍋、両手鍋、オイルポット、保存容器にグラスまで。新作の「ドリップケトルS」は、ドリップに特化したちょうどいい湯口。
松屋銀座での展示もとっても素敵だ。ドリップケトルができるまでの工程を、パラパラマンガのように1つずつ見せていく。最初はたった2枚の鉄板が、だんだん立ち上がって立体になって、何度かうわ薬をかけられて、最後ケトルになるまでの物語。簡単にはできない。たくさんの作業を経て、少しずつ、少しずつケトルになっていくんだなあ。小泉さんの仕事には、いつだって「こつこつ」のものづくりに対する愛のまなざしがある。そんなわけで、朝は決まってコーヒー豆を挽くところからはじまる我が家にも、そろそろドリップ専用の琺瑯があってもいいかもね。
※4月26日(水)−5月9日(火)は、松屋銀座7階デザインコレクションにおいて、関連企画販売「日本の琺瑯」を開催。
※5月2日(火)には、小泉誠さんを囲むデザインサロントークとバリスタを迎えるイベント。詳しくはウェブをご確認ください。