2016年7月25日月曜日

漫画家が描く「夜のルーブル」

食わず嫌いなんてするもんじゃない、と改めて思ったものであった。

森アーツセンターギャラリーではじまった「ルーブル No.9 ~漫画、9番目の芸術~」(9月25日まで)がいい。


「ルーブル」「芸術」という側面から誘われる漫画の世界は、それまであまり親しんでこなかったような人(私のような)にもきっと響く。実際、十分楽しんだし、特に「バンド・デシネ」というジャンルに出会えたことも個人的には大きな収穫だった。

何より、日仏が誇る漫画家たちの無限の想像力には本当に驚かされた。「ルーブルから何かを感じ、それを漫画で表す」というお題に対し、彼らはイマジネーションの翼を見事に羽ばたかせて、時空や、重力や、あらゆる制約を飛び超えた。絵画でも彫刻でも映画でもない、ただ唯一漫画でしか成し得ない、時間と空間と物語の融合を見せてくれた。で、それを目の当たりにし、間違いなく漫画は芸術だ、と唸ったわけだ。今までごめんなさい!という気持ちでいっぱいである。

参加作家の多くが、ルーブルのなにかミステリアスな部分に興味を抱いているのも印象的だった。人々が芸術だと賞賛し崇める「昼のルーブル」ではなく、夜の展示室や地下室、作品に宿る精霊たち、それが見つめてきた歴史――。今まで光があたることのなかった、ちょっと怖い「夜のルーブル」(=芸術の裏側)に足を踏み入れられるのも、本展のみどころ。