2015年11月9日月曜日

Eatable of Many Orders「食べられるウール」

11月。那須塩原の森を散歩した。

どんぐりだの栗だの、木の実や落ち葉で敷きつめられた柔らかなこみちを家族連れだってゆっくりと歩いた。背の高い木々のあいだから暮れなずむ秋空の光が注ぎ、夕方になって冷えた空気がもみじの紅色をいっそう深く染めあげる。


子どもらは不思議なかたちやいろを見つけてはいちいち歓声をあげて大人を呼んだ。一番幼い子は父の肩の上ですやすやと眠る。彼女たちには木々のささやきが聞こえ、この場所に暮らす生き物の気配を感じとる。冬の準備に出遅れた小さな蛙を手のうちにとらえ、ひとしきりもてあそんでから森にかえす。

「さあ急ぎなさい、冬はもうすぐそこまで来ているよ」

見上げれば頭上にはぽっかりとあいた穴のような空があって、どこまで覗き込んでみても水色だけが静かに澄みきっている。

エタブルオブメニーオーダーズの服はこんな森が似合う。
私たちは森でこそ、彼らの服を好んで着る。


もちろんビルの谷間でもいいのだけれど、自然のなかでならいっそう、服がのびのびと呼吸しはじめるのを感じる。麻、コットン、ウール。古代から受け継がれた自然の素材と技術の歴史をひも解き、かつて衣食住が美しく融合していた頃の人間の知恵に学ぶ。さらに新たな解釈と想像力を加え、現代の衣服として落とし込まれたのがエタブルの服。どこか懐かしさをたたえながらも常に新しい挑戦に満ち、驚きを与えてくれる。

デザイナーやクリエイターであることと、一個人であり、家族であり、普遍的な日々を生きる生活者であること。そこには順番も境界もない。むしろ並行的に、時にまじりあいながら進んでいる。細分化専門化され、いくつものキャラクターを使い分け、生活と仕事も分断されがちな東京からとはあきらかに異なる世界の眺め方。それが独自の服づくりにあらわれていると感じる。

素敵な休日が終わり、エタブルの服を脱ぐときは少しさみしい。でも、だからこそまた森へと足を運ぶのが楽しみになる。



Eatable of Many Orders「食べられるウール」
会期:2015年10月31日(土)~11月23日(月・祝)火曜日休廊
会場:森をひらくこと、T.O.D.A. オープンプレイス
入場料:無料
主催:森をひらくこと、T.O.D.A.