2015年10月27日火曜日

Any Tokyo 2015

ものづくりの流れは時とともにうつり変わり、企画者やデザイナーも新しい発表の場や在り方を模索していく。

情報がすばやく発散し収束していくような時代、リアルなデザインイベントに求められる役割とは派手な演出や満載のお祭り感というよりは、人間同士の密な対話であったり、ものが発する存在感を肌で感じられること。ものと向き合う静かな時間、かもしれない。

「デザイン」という言葉が一巡して、いっとき「アート」にもなって、でもやっぱりもう一度、腰を据えて「デザイン」。

増上寺で開催されている「Any Tokyo」は、そんな今にちょうどいい規模感のデザインイベントだ。

Any Tokyo 2015
増上寺(光摂殿)
2015年10月24日(土)~ 11月3日(火・祝)


ちゃんと「もの」が主役で、そばに作った人がいて、一人ひとりに思いや考えを伝える。来場者もフィードバックする。一言でいえば正統派のデザインイベント。広い空間に16組ゆったりと配置され、がちゃがちゃしていない。無機質なパーテーションもなく、デザイナー同士が歩みよって声をかけあえる自由度がある。KanSanoによるピアノのサウンドインスタレーションが会話を邪魔しない程度に流れ、サロンのようないい雰囲気だ。こういうの定期的に行われないかなあ。もっと見たい!

出展については、驚くようなアイデアやメッセージ性はさておき、まず、ものを作ることに対して丁寧に向き合っている人が揃ったなあという印象。「デザイナー」である前に「作り手」である、と見える。自ら手を動かすことを楽しみ、発想がおもむくまま作ってみる。ものづくりの根っこみたいなところで素直に取り組んでいる人が多く、こちらも素直に共感した次第だ。結局、言葉よりも思いが先行するものには心に残る強さがある。

「SHIZUKU」BLUEVOX!
漆をひたすら塗り重ねることで形を作る「即色堆漆(そくしきついしつ)」という新しい技法を用いた酒器。

「Nebbia Interactive Light」nbt.STUDIO
台湾のデザイナー、ヘンリー・シャオ(Henry K.T. Hsiao)による壁面照明。同国で年間100万台廃棄されるというテレビのフィルムをリユース。

また、ユーザーが手を加えることで完成する参加型の作品もあり、これもワークショップ時代らしい傾向かもしれない。みんなだって本当は作りたいし、やってみたい。デザインをオープン化したり、ユーザーのモチベーションをオーガナイズしていくことも、これからのデザイナーのひとつの役割になるかもしれない。

「Dye It Yourself」TAKT PROJECT
工業用フィルタとして使われている吸水性プラスチックを家具という“支持体”に。これでぜひワークショップしてほしい!