うねり、どよめき、胎動。
新しいものが生まれていく、そんな渦のなかに飛び込みながらも、そのまなざしは常に少し中心から離れている。
これまでアーツ千代田3331の展覧会に行っても、いつだってディレクター中村政人氏は少し離れたところから見ていた。
いつも一歩離れて見ている。
にこやかだけれど、ほんの少し眉を寄せている。
「ん?」と思っている。
「明るい絶望」。
それがアーティスト中村政人氏の視点だ。
今回はそんな人が10年ぶりの個展をほかならぬ、氏のアイデンティティでもあるような場所、アーツ千代田3331で開く。
この10年、地域のことを耕してきた。中心から一歩離れて色んなことを育ててきた。だけど、いよいよ満を持して、ここ、東京のど真ん中でやる。さあ、やっとこさ見られる。
で、やっとこさ渦の中心に立った(立ってみた)中村さん、大きな身体を少し丸めて、気のせいかもしれないけれど、それでもやっぱりそこから一歩離れていたいように見えた。ストイックなまでに自分中心ではない人、なのかな。
会場の大部分を占める展示として、ソウル、大阪、東京と各都市の90年代(1989-94年)が700枚という夥しい数の写真で綴られている(それでも4万枚から選んだそう)。うねり、どよめき、胎動。70年代も、90年代も、街で起きていることは結局変わらないんじゃないか。
写真を懐かしがる声も聞かれるけれど、渾身の新作インスタレーションこそ、ぜひ。
中村政人 個展「明るい絶望」
アーツ千代田 3331 1F メインギャラリー
2015年10月10日(土)~11月23日(月・祝)/